とっさのときの自己治療ガイド【服薬指導書】

とっさのときの自己治療ガイド【服薬指導書】

海外旅行中に多い健康トラブルとその対処法(自己治療方法)について、以下にまとめました。

医師の問診、指導の代用として、注意深くお読みください。

目次

服薬指導書

食べ物を口に入れた瞬間、プーンと臭い匂いがした。周囲の人たちを気遣って吐き出すわけにいかず思い切って飲み込んでしまった。お腹をこわしそうだ。

すぐに抗菌剤の「タリビッド」を2錠内服してください。それで事なきを得ることもしばしばです。無事に済まず、その後下痢や腹痛が起こるようなら、次の質問を参考にしてください。

腸がよじれるように痛く、ゴロゴロなっている。下痢もひどい。

細菌性腸炎を起こしている可能性があります。自己治療としては、毎食後に「フェロベリンA」2錠、「ビオフェルミンR」1錠、「セスデン」2錠、「タリビッド」2錠を内服してください。その治療で治ってしまったら、病院に行かないで様子をみることも可能です。

お腹をこわしたようだ。便がゆるい。

単に、軽く便がゆるいぐらいは放置してもかまいませんが、気になるときは、毎食後に「フェロベリンA」を2錠と「ビオフェルミンR」を1錠ずつ内服してください。

何かにあたったのかな。下痢をしている。

海外では体の合わないものを食べて下痢する人が頻発します。「あの地方に行くと不思議に必ず下痢をする」という人もいます。下痢が続くときには、コレラなどの怖い病気もありますが、とりあえずは急性腸炎と判断して、「フェロベリンA」を2錠、「ビオフェルミンR」を1錠を内服してください。大腸内で病原菌が繁殖しているような気がするときは、「タリビッド」を毎食後に2錠を追加してください。

水が合わないのだろう。下痢が続いている。

長期間、軽い下痢が続くことがあるようです。意外なことに大腸を調べても異常が見つからないことが多いのです。ストレスなどが原因で神経性の腸の失調が関係しているのかもしれません。整腸剤を長期間内服するより、精神安定剤が効くことがあります。整腸剤を内服していた方が安心、という気分でしたら、「ビオフェルミンR」を毎食後1錠くらいのペースで内服してください。

イライラする。どうも落ち着かない。冷静になりたい。

冷静沈着という言葉があります。いつもぐっと落ち着いていられたら、このような悩みを持つことはありません。「イライラするぐらいで大したことはない」という人もいますが、仕事に重大な支障をきたすこともあります。また、海外ではぎくっとするような出来事に出会うことも多く、そんなときに胸の中の嫌な感じがなかなか取れないこともしばしばです。このようなときには、遠慮しないで精神安定剤を利用してください。「メイラックス」という薬がお薦めですが、他にもいろいろな種類があります。一回や二回内服したぐらいでクセになることはありません。

ノドがイガイガする。このままではノドをやられそうだ。

海外では、緊張感が高まって日本にいればひかないような風邪にでも、あっけなくかかってしまうことがあります。海外でひいた風邪をこじらせてしまえば、思わぬ重大問題になりかねません。
ノドにトラブルを引き起こす原因にはいろいろなものがあります。ウイルスや細菌は一般的ですが、乾燥した空気、アレルギーが関係する花粉、刺激をともなう空気などでもノドはダメージを受けます。放っておいても治りそうだけど、もしかしたら悪化するかもしれない、というノドの症状を感じたときは、まず、うがいをすることと「SPトローチ」をなめることが肝心です。SPトローチは医療用のトローチです。

そして、無理をしないでよく休むことです。ウイルスが原因だったとき、免疫力が低下していると、そのままウイルスの完全侵入を許すことになります。身体を休めていれば自己免疫力が高まり、ウイルスを撃退できる率は飛躍的に高まります。
裏ワザとして、暖かいお茶や紅茶を飲む方法があります。お茶や紅茶に含まれるカテキンという成分はウイルスをやっつける作用を持っています。

ノドが痛い。よく扁桃腺を腫らしてしまうので心配だ。

よく扁桃腺を腫らす人は、特に海外では早目に抗生剤を内服するのがいいでしょう。最近は抗生剤の種類が増えましたが、古典的な「ケフレックス」という抗生剤で十分です。ケフレックスを2錠ずつ1日3回内服してください。ノドの痛みに対しては、解熱鎮痛剤の「ロキソニン」がいいでしょう。1回1錠を1日3回内服してください。ロキソニンは胃にはやさしいですので、やむを得ないときは空腹で飲んでもかまいません。一方、イソジンを使ってうがいを繰り返すのが大切なのは言うまでもありません。

片田舎で転んで擦り傷ができてしまった。化膿しそうだ。

動物が人と共生しているような地域では、転んで怪我をしたときは抗生物質を内服しましょう。海外ではヨーロッパなどでもウマと共生しているところが多いので注意が必要です。化膿して傷口が醜い痕になって残ってしまうこともしばしばです。こういうときは「ケフレックス」という抗生剤を毎食後2カプセル内服してください。傷口はよく洗浄して、ガーゼをあてるか、バンドエイドのようなものを貼るかして保護してください。市販の塗り薬があれば塗ってもかまいません。

お酒を飲みすぎて胃がムカムカする。

海外ではほどよい緊張感と開放感がミックスしてついついお酒を飲み過ごしがちです。「飲みすぎた自分が悪い」と思ってひたすら我慢している人が多いようです海外生活が楽しくなくなります。こういうときは「ザンタック」という薬を1錠内服してください。30分ぐらいでムカムカがおさまってきます。ただし、あまりにムカムカ感が強いときには、ザンタックの刺激で嘔吐感が高まることがあります。その場合は、すんなりと吐いてしまいましょう。ラクになります。

空腹時に胃がちくちくと痛い。胃潰瘍か十二指腸潰瘍ができたかもしれない。

病院に行くとバリウムの胃透視検査や胃カメラを行うことになります。そして、胃潰瘍や十二指腸潰瘍がしばしば見つかります。そして内服薬を処方されます。病院に行く時間がたっぷりあればそれでいいでしょう。しかし、海外にいるときはそれどころではありません。とりあえずは薬だけで治してしまいましょう。「ザンタック」を朝と寝る前に1錠ずつ内服します。それと、「セスデン」を毎食後に1カプセルまたは2カプセル内服してください。タバコは中止し、辛い食べ物などはやめましょう。症状は次第におさまってくるはずです。ただし、運が悪いと胃ガンだったりすることがあります。日本に帰ってきたら早目に医療機関を受診するのが賢明です。

とにかく胃が猛烈に痛い。唸り声が出るほどだ。こういうのを急性胃炎というのだろうか。

急に胃が痛くなったときは、緊急治療が必要かどうかの見極めが必要です。「胃に穴があいた」などというのは緊急手術が必要だからです。そんなときの自己治療は絶対不可能で救急車を呼ぶしかありません。
ここでの話は、そのような緊急事態以外のケースを考えましょう。何かが原因となって急性胃炎が起こっているのです。あわない物を食べたときや腐ったものを食べたとき、食中毒が関係するとき、強いストレスが関係したときなどに急性胃炎が起こります。海外では慣れない食べ物の影響で急性胃炎を起こす人が大勢います。病院に行って胃カメラで病変部を確認するのが無難ですが、海外ではそれどころではありません。「ザンタック」を1錠と「セスデン」を2カプセル内服してください。そして痛みがラクになるかどうかをみてください。

なお、イカやサンマなどの生魚を食べたあと、4~8時間で急激な胃の痛みが起こったときは、アニサキス症の可能性があります。そのときは、胃カメラでアニサキスを取り除かないと簡単には治りません。

風邪ひいたみたいだ。鼻水がずるずると出る。

鼻水中心の風邪をひいたときや海外への出発前にすでにそんな風邪をひいているということもしばしばみられます。そんな症状がある場合、実際に一番有効なのは、「ダンリッチ」という薬です。これを1カプセル内服してください。鼻がスッととおってラクになります。鼻の奥とノドの奥の接点が痛いときは、抗生剤の「ケフレックス」を毎食後2カプセルずつ内服すればいいでしょう。

ズキン、ズキンと脈打つような頭痛がする。

頭痛の原因のほとんどは、片頭痛か筋収縮性頭痛です。それぞれに手の込んだ治療法がありますが、とりあえずは、鎮痛剤の「ロキソニン」を1錠内服しましょう。偏頭痛は遺伝要素の強い疾患ですが、海外では緊張感や強い日差しのために誘発されることが多いようです。

目の奥が痛い。あるいは、眼そのものが痛い。過労かなあ。

怖い病気で「緑内障発作」のパターンがありますが、ここでは通常の過労などでおこる眼痛としてお話します。鎮痛剤の「ロキソニン」を1錠だけ内服してください。そしてぐっすりと眠ってしまうことです。

よく起こることだが、こめかみの部分が痛くなってきた。

片頭痛のパターンと思われます。手の込んだ治療法がありますが、とりあえずは、鎮痛剤の「ロキソニン」を1錠内服しましょう。

打撲した骨や関節が痛い。バスで長時間座っていたら腰が痛くなってきた。

レントゲンで骨折や骨のズレ、ヘルニアなどが関係していないかどうかが重要ですが、海外では病院に行く暇がありません。とりあえず鎮痛剤を内服して我慢するしかありません。「ロキソニン」を1錠内服してください。

熱が出た。風邪かなあ。インフルエンザが流行っているとも聞く。あっさりと熱を下げる方法はないものだろうか。

海外滞在中の健康相談で意外と多いのは、単純に「熱が出る」という相談です。まずカラダ全体をゆっくりと休めることが大切です。無理をしないで休んでいたら、それだけで回復することもよくあります。熱が出れば、「ロキソニン」を1錠内服してください。ロキソニンは1日に4錠まで内服してもかまいません。

気が逸っているのか、今夜はなかなか寝付けない。すっと眠りたいものだ。

せっかくの海外滞在です。このようなときは、柔軟に考えて、睡眠薬を飲むことをおすすめします。「俺は薬が嫌いだ」と頑固に構えないほうがいいでしょう。睡眠不足のために、重大な健康障害が発生することが多いのです。1回内服するぐらいでクセになることはありません。「ハルシオン」や「レンドルミン」がおすすめです。作用時間が人によって異なりますので、半分に割ったりして利用するといいでしょう。

時差ぼけが心配だ。飛行機の中で上手に調節する方法はないものだろうか。

飛行機の中ではずっと眠っているに限ります。短時間作用型の睡眠薬を利用して時間をうまく調節したうえで眠ってしまってください。飛行機内では極端な運動不足になってしまいます。目的地に着いたら、かならず運動してください。

ときどき胸が痛くなる。狭心症というやつではなかろうか。

日本にいるときは胸痛など経験することはないのに海外にいると軽い緊張感か長時間の移動による過労のせいか、胸痛を感じる人がいます。ごく軽度の狭心症が海外にいるときのみ表立って出てくるということがあるようです。
痛くなったときに、「モノはためし」の気分で「ニトロール」を舌下投与してください。数秒から数十秒以内に胸痛がなくなれば、狭心症である可能性が非常に高いといえます。帰国したら、できる限り早く、病院で検査を受けるべきでしょう。回復するのに数分かかれば、狭心症とは関係なかった可能性が大きいです。ただし、上記は1つの指針であって確定的な話ではありません。ニトロールを内服したあと、副作用として軽い頭痛をもよおす人がいますが、横になって休んでいたら、自然になくなります。

経験のない激しい胸痛で冷や汗が出る。心筋梗塞のような気がする。救急車がくるまで、せめてなにか対処する方法はないだろうか。

毎年500人前後の日本人が海外で死んでいますが、そのほとんどは心筋梗塞か脳卒中です。自己治療は不可能で、救急車(ambulance)を呼ぶしかありません。

海外で救急車がくるまでにできることは、心を落ち着けることとカラダを動かさないことと、ニトロールを舌下投与することの3点です。心理的パニックは症状を悪化させますし、動き回ると心臓により負担がかかります。ニトロールの舌下投与は心臓をとりまく血管を拡張させ、また心臓にかかる負担そのものを軽減にします。以上の3つを行ったかどうかだけで、生きるか死ぬかの違いが出てきます。

排尿時に痛みがある。尿道炎のような気がする。

海外で多い相談の1つです。性の開放感が原因になっていることもしばしばです。ためらわずに、まずは「タリビッド」を2錠内服してください。その後は毎食後2錠ずつ内服すればいいでしょう。原因が大腸菌などならすぐに治ります。ただし、クラミジアその他の性病の時には、「ミノマイシン」や「クラリス」という抗生物質が必要です。それらは、1日に2回、朝食と夕食後に1錠ずつ内服します。

尿が頻繁で、排尿時に痛みもある。尿も濁っている。下腹部がちくちくと痛い。膀胱炎に違いない。

海外では団体での長時間の移動も多くトイレに行けないこともしばしばです。そのため女性中心に膀胱炎が起こりがちです。膀胱炎の場合は、抗生剤(抗菌剤)を内服することと水分を多くとって尿量を増やすことが大切です。水分はビールでもいいでしょう。抗生剤(抗菌剤)は、ニューキノロン系と言われるものがお薦めです。新薬ラッシュが続いていますが、私が薦めるのは「タリビッド」という薬です。身体が小さい人は毎食後1錠ずつ、身体が大きい人は毎食後2錠ずつ内服してください。

何かが接触してかぶれてしまった。かゆみもひどい。

患部に、「デルモベート軟膏」を塗ってください。アレルギー関係でかぶれているときは、素早く治るでしょう。とくに森林地帯や山中に行くとき、デルモベート軟膏は必携です。

花粉かほこりか何かへのアレルギーがでたのだろう。鼻水やくしゃみがとまらない。

アレルギー性に鼻水やくしゃみが出るときは、長期的な視野からの治療を考慮する必要がありますが、とりあえずは「アレグラ」(旧名トリルダン)を1錠内服して、アレルギーの発作を抑えてください。

また蕁麻疹が出てきた。なぜだろう。どうしたらいいのだろうか。

「毎日一定時間に蕁麻疹が出現し、数時間で消える。それが数ヶ月以内続いてそのうちに治ってしまう。蕁麻疹の原因がついにわからなかった」ということは、海外では比較的多いようです。何に対するアレルギーがあるのかを調べる必要がありますが、とりあえずは、蕁麻疹が出る時間の1時間ぐらい前に「アレグラ」を1錠内服してください。帰国したら病院へ行ってアレルギーの検査を行いましょう。

虫に刺された部分のかゆみがひどい。

抗アレルギー剤の「アレグラ(またはトリルダン)」を1錠内服してください。かゆみはおさまります。ただし、熱帯地方の蚊にさされて、マラリアが感染するということがありますから、その後熱が出るなどの症状があれば、海外にいても速やかに病院を受診してください。

便が出なくて、気分が落ち着かない。普段はこんなことはないのだが・・・。

日ごろは、便秘などしたことがないのに、たまに便秘するとあまり気分はよくありません。旅行先ではそのようなことが起こりがちです。だからといって、便秘薬を内服する気にもなりません。そういうときは、とっておきの方法があります。「レシカルボン座薬」という座薬を肛門から挿入するのです。15~30分以内に、便が一気に排出されて、爽快な気分になれます。

※注意

医者自身が好んで使う安全度の高い薬のみの解説にしました。短期の利用ではきわめて安全度の高い薬ばかりの選択です。といっても抗生物質や鎮痛剤では、発疹などの副作用が出る人がまれにいます過去の経歴などで副作用歴のある人は、特に注意してください。

また、このような形式で医療用薬を利用するときは、万が一のトラブル時には主体性の問題に帰結することをよく理解してください。

海外に行く人のためのコーナーカテゴリの最新記事