風本真吾の健康管理学事始め 第9回

風本真吾の健康管理学事始め 第9回

自分の意志で食べる量をコントロールしなければいけない、という時代になっています。ある意味で、過酷な時代です。
体重が増えてしまってどうしようもない時は、医療用の食欲抑制剤を積極利用するのも、健康管理の一つの方法です。

食べ過ぎれば体重は増えます。食べなければ体重は減ります。そのようなことはわかりきっていますが、食べる楽しみの誘惑には勝てないものです。
人は口から摂取するものだけを唯一の栄養源として生きています。他に栄養の摂取方法はないのです。栄養が欠乏すれば、やせ衰えて死に至ります。だから、人類誕生の時から、その栄養が欠乏することに強い不安を持っていました。人は、機会があるならできるだけたくさん食べておこう、とする本能を持っています。

食糧豊富な時代になり、その本能が仇(あだ)となっています。ついつい食べ過ぎて、体重が増えてしまうのです。過体重が健康に悪いことなどよくわかっています。食欲を我慢し、食べる量を減らさなければいけない、という過酷な時代になりました。
また、ストレスが多い時代です。ストレスは、脳の視床下部に影響を与えて、本能を狂わせます。
「食べなければイライラする」
「ストレス発散のために、食べなければ気が済まない」
という人が大勢現れます。そして、視床下部にある摂食中枢、満腹中枢と連動し合って、
「たくさん食べれば落ち着く」
という状態になります。本能がそうなるのですから、どうしようもありません。

もともと人の身体は、体重が増え過ぎてしまうと、肥大した脂肪細胞からレプチンという食欲抑制物質が分泌され、食欲が抑えられます。しかし、そのレプチンによる調整能力の歯車が、一時的に狂ってしまうことはよくあるのです。
本人自身は、「これではいけない。なんとかしなければ」と思っているのですが、身体がいうことを聞きません。ついに気づいた時には、過剰に太ってしまいのです。食欲に関しては、にっちもさっちもいかないことはあるのです。食欲中枢の問題であり、人間本能の問題です。
あの時、「食べまくらなければ気が済まなかった」という期間に5~10kgくらい増えてしまって、そのまま落とすことができない、なんてことはよくあることです。体重はすぐに増えますが、落とすのは簡単ではないのです。その増えた分を落とすために、四苦八苦します。しかし、成果はなかなか上がりません。加齢に伴い消費エネルギーが減るので、ますます苦労します。
20歳代以後の体重の変化を思い出してみてください。あの時に3kg増えた。あの時は10kg増えた。頑張って5kg落としたけれど、かえってリバウンドで7kg増えてしまった。などの思い出がいっぱい湧いてきます。

食欲中枢を含む身体の歯車が狂ってしまった時に思い出してほしいのが、医療用の食欲抑制剤です。成分名を「マジンドール」といいます。小さな錠剤です。
昼食の一時間前にこの薬を内服すると、目の前に食べ物があっても手が伸びなくなります。そして、少し食べればもういいや、という気分になります。寝るまで効いています。
「食べたいのに食べられない」という苦しみではなく、「いつも満足している」という喜びの中で、食べなくなります。食べる量が減りますので、体重が落ちていく、という当たり前の原理です。ただし、この薬は、投与量に比例して効果が現れますので、使い方にはかなりのコツがあります。熟練した医師でないと、適切に使いこなすことはできません。
弱点は、喉が渇くことと便が硬くなることです。この両者に対しては、桑のお茶が有効です。喉の渇きを潤すのと同時に、桑の成分が食べ物の腸内通過時間を速めて、便を柔らかくします。
他の副作用として、初日に軽い吐き気がして気持ちが悪くなることがある、数日後に軽い頭痛を感じることがある、などがありますが、いずれも良い対処方法があります。

この薬と自分とをマッチングさせることができれば、生涯の体重管理は容易になります。5~10kgを落とすのは容易で、3ヶ月の薬使用を1セットとして1~3年で2~3セットほど取り組むと、20~30kgの減量も可能です。実際には、気楽に実現できる体重目標を設定します。
この薬は3~4ヶ月以上使っていると、だんだんと効かなくなってきます。効かなくなる前に内服を中断して、休薬します。効かなくなる前に休薬すると、薬を再開した時にまたよく効くのです。休薬期間は、1ヶ月から1年と人それぞれです。 休薬中は体重が横ばいの人もいますし、少し増える人もいますし、食べ過ぎる感覚がなくなって、さらに体重が落ちるひともいます。

この薬を使いことなしたことがない医師は、身体依存のことを心配します。つまり、「身体が欲して薬がやめられない。薬を中断すると身体に異常が起こる」というものです。この薬は継続して使用すると効かなくなり、つまり耐性ができて、身体依存する人は現れません。私は、3000人以上にマジンドールを使ってダイエット指導を行いましたが、身体依存を起こした人は0人でした。
稀に「薬を飲んでいなければ不安になります」と言って、精神依存的な話を出す人もいますが、「続けていたらすぐに薬が効かなくなりますよ」と「効かなくなるまで続けたら、再開した時も効かないですよ」という話をすると、すぐにやめてくれます。

マジンドールは処方せん医薬品ですから、この薬を使用する時は、医師の直接指導がついています。それらの対処法を教わって、きっちりと指導を守ってダイエットに励むことになります。
体重を落としながら、体重増減の医学的原理、特異動的作用、味覚特異性満腹、褐色脂肪細胞、ローT3シンドローム、低血糖発作、DNJ効果、β3アドレナリン多型解析など、ダイエットセオリーを学べば、今後の体重維持に役立ちます。

太ったままの身体で生活し続けるか、思い切って食欲抑制剤を使って一定量の脂肪を落として新しい生まれ変わった身体を手に入れるか。そこは考えどころです。薬なしで自力で体重を落とせるなら、それにこしたことはありません。すぐに実行してほしいものです。
体重を減らした後は、EPA体質づくりに取り組むことをおすすめします。脂肪が減っているので、EPA体質に変身しやすくなります。

この薬が認可された直後の平成5年のことです。体重110kgで、糖尿病、高血圧、高尿酸血症その他で10種類以上の薬を飲んでいる62歳の男性を指導して、この薬で86kgまで痩せました。結果、内服の薬は半減しました。その後、体重はじわじわと増えましたが、青魚のEPAサプリメントを摂ってもらい、100kg弱まで太りながらもEPA体質に変わってもらいました。90歳を超えるまで、糖尿病、高血圧は続いており、足腰は弱りましたが、頭脳明晰で人生を楽しんでおられます。
あの時の思い切った24kgの減量とその後のEPA体質化が功を奏して、元気なまま長生きしてもらうことができたのです。

風本真吾の健康管理学 事始めカテゴリの最新記事