寿命管理は、予想医学を土台とします。予想医学とは、死ぬ可能性のある病気一つ一つに対して、自分の身体が、「その病気にかかりやすい」「その病気にかかりうる」「その病気にかかりようがない」を分析していく学問です。

寿命管理は、予想医学を土台とします。予想医学とは、死ぬ可能性のある病気一つ一つに対して、自分の身体が、「その病気にかかりやすい」「その病気にかかりうる」「その病気にかかりようがない」を分析していく学問です。

人が死んでしまう病気といえば、どんな病名を連想しますか。ガンを連想する人もいれば、脳卒中や心筋梗塞を連想する人もいます。また、身体が思うように動かなくなり、やがて寝たきり状態になって、老衰で死んでいく姿を連想する人もいます。場合によっては、交通事故や自殺を連想する人もいます。

ガンが見つかってしまえば、治療で治りきるか、闘病の末に死んでしまうか、二つに一つです。闘病は嫌だと言って、すべての治療を放棄し、自然に死んでいくことを望む人もいます。自然に死んでいく場合は、最後の一週間から一ヶ月ほどは苦しむことになる可能性が大きいです。
最近は、ガン細胞の遺伝子分析が進歩し、その分析結果に応じた治療が実施されるようになってきましたので、治療成績は昔よりはるかに優れたものになりました。しかし、診療現場では、まだまだ実験的な要素が多く含まれているのは否めません。
メジャーなガンといえば、肺ガン、胃ガン、大腸ガン、肝臓ガン、すい臓ガンです。女性では、乳ガンが加わります。男性では前立腺ガンが加わります。食道ガンも増えていますので、忘れてはいけません。白血病もガンの一種で、若い人にも多いので、世間的には目立っています。

「あなたは胃ガンにかかると思いますか?」と尋ねられたら、どう答えますか?
「はい。かかると思います」と答える人もいますし、「絶対にかからない」と答える人もいます。ほとんどの人は、「わからない」と答えます。
また、「かかりそうな気がします」と答える人がいたら、それは両親の一方が胃ガンにかかったことがある場合や、日ごろから「胃が痛い」という症状を抱えている人たちです。
胃ガンには、遺伝性はありません。一族に胃ガン患者がいるからといって、不安に思う必要はありません。「日常から胃が痛くなることが多い」という人は、胃ガンにかかる可能性があります。
ところで、「あなたは今、胃ガンにかかっていますか?」と尋ねられたらどうでしょう。つい最近に、胃内視鏡検査を行った人は、「大丈夫です。胃ガンはありません」と自信をもって答えます。ここ数年、胃内視鏡検査を行っていない人は、「わかりません」と答えながら、やや不安な気分になります。

人間ドックや健康診断は、この「不安を払拭し、自信を得る」ために大切な役割を果たしているのです。「早期発見・早期治療」は、ガンに関してはもちろん重要なのですが、検査を行って、「ガンが見つかりました。早く見つかってよかったですね。検査を受けたおかげです」と言われても、嬉しくも何ともありません。真の価値は、「健康不安を持たずに日常生活を営める」というところなのです。人によっては、人間ドックで「異常なし」と言われた瞬間からやる気満々になって、仕事に取り組む人、趣味に取り組む人も出てきます。

さて、本題に戻りましょう。「あなたは胃ガンにかかると思いますか。かからないと思いますか?」と尋ねられた時は、「わからない」と答えてはいけないのです。自分の身体を調べて、身体の未来像を予想することが健康管理上大切なことは言うまでもありません。「かかりようがない」「かかりうる」「かかりやすい」のどれかで答えてほしいのです。
胃ガンのかかりやすさを予想する上では、まず胃粘膜にピロリ菌がいるかどうかがポイントです。全胃ガン患者の90%は、ピロリ菌を持っている人たちです。そして、ピロリ菌がいるだけで、胃ガンの発症率は6倍に高まると思ってかまいません。
ピロリ菌は正式名称を、ヘリコバクター・ピロリと言います。胃の中は強い酸性ですので、酸に強い結核菌以外は宿れないと思われていました。しかし、1982年に強い酸性の胃の中にピロリ菌が常在できることが証明されました。そして、実際にそのピロリ菌を培養して、口から飲み込むと、胃に強い炎症が起こることも証明されました。ピロリ菌が蔓延している地域と胃ガン好発地域が一致していることもわかりました。口から感染しますので、衛生環境の悪い地域でピロリ菌は蔓延します。日本では、戦後の衛生環境の悪い中でピロリ菌は蔓延したのです。

ピロリ菌が胃の中に常在すると、胃の粘膜に炎症が引き起こされ、やがて胃の粘膜に委縮という現象が生じ、その委縮した胃粘膜から胃ガンが発生するのです。萎縮というのは、きれいなピンク色のはずの粘膜が白っぽくなって、やや硬いゴワゴワした状態になっているもので、わかりやすくいえば、「老化した胃粘膜」ということになります。
今の医学では、萎縮の程度まで推測することができます。検査でペプシノーゲン反応というのを調べるのです。この反応の結果で、「あなたの胃粘膜は強く、萎縮しています」「あなたの胃粘膜は若々しくて、心配な要素はありません」まで語ることができます。

ピロリ菌とペプシノーゲン反応は、採血するだけで調べることができます。そして、その両者の結果、あなたの身体に対して、

  • あなたの胃にはピロリ菌がいます。しかもそのせいで、胃粘膜は萎縮しており、胃ガンが発生しやすい状態です。
  • あなたの胃にはピロリ菌がいます。しかし、胃粘膜はまだ老化していません。まだ大丈夫だとは思いますが、胃ガンにかかりうる状態です。
  • あなたの胃粘膜にピロリ菌はいません。そして、胃粘膜も若々しい状態です。胃ガンにはかかりようがない状態です。
  • あなたの胃にはピロリ菌はいません。しかし、胃粘膜は強く萎縮しています。何か原因になるもの(指摘物・常陽薬物・ストレスによる胃酸過多など)はなかったですか。胃ガンにかかりやすいから注意しましょう。

の4つのどれであるかを、分析することができるのです。

このように、身体を調べて、死に直結する病気の一つ一つに対して、「かかりやすい」「かかりうる」「かかりようがない」に3分類することを目的として、人体の未来像を予想する学問を「予想医学」といいます。とにかく長生きしてもらう寿命管理は、この予想医学を土台としているのです。
なお、胃ガンいは、「スキルス」という特殊な胃ガンがあります。これが発生する可能性はすべての人にありますが、マイナーな話を大きく取り上げると、健康管理の指標になりません。予想医学は、健康管理の指標を与えるために、大きな視点でとらえることになります。

胃ガン、肺ガン、肝臓ガン、大腸ガン、すい臓ガン、脳卒中、心筋梗塞などの病気に対して、この予想医学を進歩させることができたら、どれほど素晴らしいことかは言うまでもありません。
盛んに研究されている遺伝子解析も、この予想医学を進歩させるに違いありません。遺伝子解析も含め、予想医学の研究がどんどん進むことを願いましょう。

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