英国の医療保険制度

英国の医療保険制度

「ゆりかごから基場まで」の言葉は、イギリスの高齢福祉政策を表したものです。産まれてから死ぬまで、ずっと国として守っていくよ、という意味です。

ただ、この言葉が生まれたころのイギリスは、世界の覇権国家として絶大な国力を有していたため、このような理想的な福祉政策を実行できたといえます。しかし、国力が徐々に低下するにしたがって、この政策には多くの負担が伴うことになりました。今でも、高い税負担と引き換えに、イギリスの福祉制度は非常にレベルの高いものとなっています。

では、イギリスの医療保険制度は、どのようになっているでしょうか。イギリスは国民保険サービス(NHS)によって、原則全て無料で医療を受けることができます。NHSの財源の8割は国民の税金で賄われ、残りは国民保険(医療・年金・雇用関係給付を含む社会保険制度)や受益者負担などで賄われています。実際の医療サービスは、NHSから一定の独立性をもつプライマリ・ケア・トラスト(PCT)といい公的機関が行っていましたが、2013年4月からプライマリ・ケア・トラストを廃止し、一般医の組合である診療委託グループが創設され、2014年以降、全てのNHSトラストをNHSファウンデーショントラストヘと移行し、より独立性の高い運営主体で二次医療を行うことになりました。これにより、政府による介入を最小化させ、NHSの管理費が45%程度節約できると推計されています。

さて、イギリスと日本は、どこが違うでしょうか。一番大きな違いは、「いきなり病院を受診できない」という点です。

イギリスでは、自分が住んでいる地域で決められた登録医師(GP)を受診し、そこからの紹介がないと病院を受診することができません。また、診療所や開業医は登録人頭制になっているので、毎年登録された人数に応じて、国から保険料が支給される仕組みとなっております。この方式だと、開業医はその地域の登録された住民に病院が少なければ、収益が上がる仕組みになっています。というのも、登録人頭制、つまり、登録患者数によって予算が分配されるからです。そのため、医者が率先して病気にならな啓蒙活動を積極的に行い、自分の診療所に登録してもらえるようにすること、病気になったときは最少限の薬を使用した治療を行うことになります。

ただし、この制度にも一つだけ欠点があります。現地のイギリス人に聞いてみたところ、医療費が無料で登録医師が決まっているため、自分が登した診療所がものすごく混んでいても、その地域の違う医師がいる診療所を受診できないようです。そのため、風邪が流行する時期などは、日本の大学病院並に待たされるようです。
それに比べると日本はフリーアクセスなので、あまり待つようなら他の開業医院へ行くことも可能です。

一方、日本の医療の支払い方式はどうでしょうか。イギリスと違って、日本は出来高払いとなっています。つまり、その地域に患者さんが増えれば増えるほど、その診療所の収益が上がることになります。薬も多く出すほど収益が上がる仕組みになっています。僕が非常勤で診療を行ったクリニックでも、余分な薬や湿布など、毎国大量に処方されているというケースもあります。
他に、イギリスの医療で特徴的なことの一つは、イギリスの身分階級制度にあるといわれています。貴族、知的労働階級と肉体労働階級はしっかりと分けられていて、使う英語まで違うといわれています。その違いたるや、NHKのアナウンサーが話す標準語と東北弁以上の違いがあるようです(ちなみに、私は東北出身です)。そして、貴族専用のかかりつけの診療所、病院というのもあるようです。

今後も世界の国と日本の保険医療を比べながら、それぞれの長所や短所を報告していきたいと思います。

世界の医療制度から学ぶ、日本の医療カテゴリの最新記事